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お客さまにより高い付加価値を提供するために
AIで熟練暗黙知を再現する要求水準書読解、計画設計のDX
エネルギー
荏原環境プラント株式会社
お客さまに提供する付加価値のさらなる追求、計画設計の変革
荏原グループは、長期ビジョン「E-Vision2030」として「技術で、熱く、世界を支える」(https://www.ebara.co.jp/ir/business/information/vision.html)をスローガンに掲げ、未来に向けた積極的な変革活動を推進しています。同グループの環境プラント事業を担う荏原環境プラント株式会社においても、ごみ処理施設の建設・運営を軸に地域社会へのさらなる貢献のために、幅広い分野でソリューションを提供する「廃棄物資源循環ソリューションプロバイダ」を目指しています。同社はその一環として、ごみ処理施設の新設における計画設計業務を対象に、熟練エンジニアや組織に蓄積された暗黙知の形式知化を通じて、社会とお客さまの期待に向かい合うことで高度な提案力を実現しています。
蓄積した技術や情報をダイナミックに有効活用し、いかに再現性と持続性のある実践的な仕組みとして整備できるかがポイントとなる中、同社は「競争力の源泉である人や組織の暗黙知」と「自然言語処理AI技術」を掛け合わせた変革活動に着手しました。
熟練の暗黙知により、要求水準書からお客さまの真の想いを読み解く
同社の変革チームは、計画設計業務の現場に入り、課題と対策を見極めていきました。
計画チームにおけるプロジェクト担当者は、入札公告によりお客さま(おもに地方自治体)から提示された要求水準書類をもとに、複数の技術部門の担当者と連携しながら内容を読み解き、要求を満たしつつ自社技術を最大限に活用した最適なプラントを思い描きながら解釈を進めます。短期間で要求や技術面での確認事項を明確にし、技術提案書など入札書類を制作します。
要求水準書類は設計・建築・管理運営を含め約400~500ページの分量があり、環境プラント全体の技術的な要求・要件も複雑で多岐にわたります。限られた期間でお客さまの要求・要件をスピーディかつ精度よく読み解くことが、お客さまの要求や持続可能な社会づくりに即した満足度高い設計へとつながります。
特に昨今では、お客さまが提案内容を非価格点(技術提案)と価格点(入札価格)の合算により評価し落札者を決定する総合評価方式が主流なため、非価格点≒付加価値提案力の重要度が増しています。お客さまのニーズを抜け漏れなく把握するとともに、自社のコア技術を応用して組み合わせ、いかに高い付加価値を提案・実現できるかが競争力に直結します。
そのため、すべてのEPC業務における検討の出発点となり重要である要求水準書類の読み込みは、技術理解の深い経験豊富な熟練者を中心とした高度な暗黙知によって、卓越した業務水準を維持していました。
蓄積した過去案件の実績データを最大活用し、顧客要求を抽出するAIを構築
同社は、SOLIZEのSpectA RFQ Guide Viewを採用し、過去の入札に関わる要求水準書類一式・質疑応答一式・不具合や追加コストにつながった要件や事象など、過去プロジェクトに関連するドキュメント群の実績情報を学習させました。その際、主要なお客さまのパターンから実績群を選定するなど、AIでの学習効率と早期業務成果、構築した仕組みのスケールメリットを追求し、目的ベースかつピンポイントでの初期構築を完了しました。
熟練暗黙知を再現、要求仕様の読解と判断をAIがサポート
構築したSpectA RFQ Guide Viewを活用し、同社では実際のプロジェクトにおける入札を対象に、要求水準書類の読み込みから始まる要件定義および見積り提案を実施しています。計画チームと各技術部門の担当者間で、AIが熟練エンジニアの勘所を再現し、これにより、要求水準書類の読解を効率化・精緻化し、仕様検討の前提となるインプット情報の抜け漏れや過去トラブルの再発防止、付帯作業の短縮など、これまで課題であった人為的なバラつきや非効率の解消につながる結果を実証しています。
また、効率化により創出した熟練エンジニアの時間を、より早期でのプラント全体を俯瞰した成立性検討や品質・コストの最適化、自社の競争力を発揮する付加価値提案など、さらなる高度判断領域へ積極的にパワーシフトする動きも開始しています。
お客さまに提供する付加価値の向上と組織知化へ寄与、さらなる変革へ
本活動の結果、要求水準書類の読み込みをAIで高度化し、人や組織に蓄積された暗黙知をダイナミックに活用することで、入札時における「お客さまのニーズの抜け漏れのない把握」と「付加価値提案力」の両立を支援し、有効性を実証しています。
SpectA RFQ Guide Viewをナレッジ基盤として、業務中に生じるエンジニア間の検討経緯や気づきを業務実績と共に蓄積することで、結論だけでなく、結論を導き出すための理由や技術的な背景・意図・根拠を含めリコメンドさせることができ、このことが「個人の経験を組織の知識に変革し続けるサイクル」に寄与しています。
本成果を受け同社では、お客さまや地域社会の声に真摯に向き合うとともに、蓄積した情報と技術開発を掛け合わせることで、さらなるお客さまへの付加価値提案力を向上し続けるための変革活動を推進し続けています。
「AIブームの影響もあり社内からは過度な期待もあったようで、「要求水準書の読解は行間を読め」という熟練暗黙知の実装や、システムを活用する部署を巻き込んだ業務運用の構築や啓発の課題など、実際はそう簡単にはいきません。ただ、業務特化型AIの選定やトライアルも丁寧に取り組んできたので、業務を効率化する面と、持続的学習のためのデータやノウハウを蓄積して高度化する面の両立をしながら、地に足がついた理解と活用が進んでいます。
本変革は、効率化の先に、お客さまに提供する付加価値向上へ向けた技術伝承や人材育成を目的としています。ごみ焼却・発電・環境対策などをさらに高度化しながら、廃棄物資源循環やChemical Recycleでの付加価値も強化していく方針です。事業環境が大きな転換期を迎える中、基盤となる技術を仕組みとして伝承し、新しい価値を創出すること。創業からのベンチャー精神で、新たなチャレンジを続けていきます」
「技術伝承も目的とした本活動をありがたく思っています。要求水準書は、量も多く、読むだけで精一杯、負荷が高い業務です。だからこそ、経験の浅い若手社員でも業務の質と効率を維持する新たな変革が必要と考えています。
新しい仕組みを導入し、定着させるためには、その利便性・効率性を肌で感じることが一番ですが、長年慣れ親しんだやり方を切り替えることが容易でないことも確かです。未来の設計者に向けた変革を推進すべく、まずは本システムの効果的な運用と着実な成果の積み上げを重点的に行っていきます。
私たち計画部は、新しい価値をお客さまに提案し、新しい仕事や挑戦を創り出す部署です。顧客要求や競争が高まる中、蓄積した自社の強みとなる技術を最大活用し、付加価値の高い提案につなげていこうと思います」
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