SOLIZE株式会社

変革コンサルティング

顧客価値を追求し続ける「次世代ものづくり革新」、
生産設備開発の効率化に向けた3D設計変革

電気機器
マブチモーター株式会社

顧客価値を追求し続ける「次世代ものづくり革新」、生産設備開発の効率化に向けた3D設計変革  

グローバル生産・供給体制の要、生産設備開発の設計変革

マブチモーター株式会社は、小型直流ブラシ付きモーター市場で世界 No.1のシェアを誇ります。玩具用途から始まり、家電・工具・住設、事務機器、健康・医療機器、そして自動車電装機器分野における革新的な価値提供により、人々の安全で快適な暮らしを支えています。同社は、「用途別標準化戦略」に基づき製品の高品質と低コストを両立しながら、世界5極事業体制によってグローバルでの地産地消を実現しています。また、創立以来追求してきた製品の標準化に加えて、過去10年以上にわたり「次世代ものづくり革新」として、部品・生産技術・生産設備に関わる技術開発も推進しています。

その中において生産設備開発は、事業拡大ペースの加速、量産ラインの立ち上げリードタイム短縮要望の高まりおよび生産国・地域の拡大により、仕向け地ごとの設備に対する要望が急速に多様化・高度化しつつありました。また足元では、熟練設計者の高齢化や定年退職等による技術継承の希薄化や設計リソース不足も課題となっていました。

そこで同社は、持続的な顧客満足度の向上に向けて、グローバル生産・安定供給体制のさらなる強化を目指し、抜本的な設備設計変革に着手しました。

拠点・設計者ごとの暗黙的な開発プロセスと設計情報管理

同社の生産拠点では、従来の数多くの人手を前提とする生産方式から、機械を前提とする生産ラインへの転換を推進しており、培ってきた独自の生産技術に基づく自動化設備の開発・設計が重要度を増しています。一方、グローバルに生産拠点数が増加することに伴い、各拠点からの多様で高度な設備に対する要望にスピーディに対応してきた結果、設計プロセスやデータ管理が、拠点や設計者ごとに最適化され、暗黙知化してしまう状況が生じていました。

また、コア技術や内製部品、購入部品の標準化・共通化を進める他方で、設備開発は産業機械特有の個別設計になりやすく、特に都度の仕様調整や工程間のつなぎ機能等のノンコア技術の領域は、熟練設計者の暗黙知によるすり合わせが中心となっていました。各設備開発拠点が使用する CAD・PDM などのシステム基盤もそれぞれの用途に最適化したツールを個別に採用しており、2D主体の情報管理も相まって、拠点横断的なデータの有効活用を阻む障壁となっていました。

このように設計者や拠点ごとに異なる、分断された設計手法・プロセス・データ管理により、品質や効率の組織的なコントロールが難しく、また、上流工程ですべての課題を解決できないことにより、手戻りや現場での調整等といった後工程の負荷が増加する傾向にありました。

この結果、設備設計工数の高止まりやリソース不足、ライン立ち上げ時のリードタイム短縮等の課題が増幅され、同社の事業拡大や新製品開発においてボトルネックとなるリスクが顕在化しつつありました。そこで、マブチグループ全体で「設備設計コア技術の形式知化」と「3D正の設計情報基盤」を掛け合わせ、「拠点・設計者に依らず最適な設計品質・効率を実現し続ける」ことを目指した抜本的な変革を実施していきました。

マブチグループ全体で設計情報を統一・共有し、3D正の情報基盤を整備

同社の設備設計部門のエンジニアを中心に、現場の情報と中期経営計画に立脚した本音/本気の議論を重ね、「マブチグループ全体で設備設計として目指す姿」を描きあげることで、現場視点の課題と事業計画視点からバックキャストした課題を、同時に解決する施策を見出しました。これにより、単なるツールの変更やシステム導入にとどまらない本質的なDX を着実に推進していきました。

設備設計部門のみならず前後工程も含めた全体最適の視点で課題に向き合い、関連部門の図面活用シーン・目的・必要情報・業務プロセスを分析し、3Dデータによる一気通貫での設計業務に向けた要件を定義しました。その上で、各拠点の設備設計者の納得感と業務遂行を最優先に、最適な3D CAD・PDMの選定と導入を行い、3Dデータ形式の構築と運用ルール整備・教育・業務適用・改善・実証のプロセスをシームレスかつ高速に繰り返しました。現場に寄り添った丁寧な合意形成と成功体験を重ねながら効果がでるまでやり抜き、拠点横断的な3Dデータによる一気通貫の情報インフラを稼働させました。

これにより、設備設計のデータやノウハウを全拠点で活用することに加えて、ユニットレベルでの標準化・流用性の向上、他部門連携での動的検証や自動化等、3Dデータを主体とする効率的な設計検討や拠点間の情報共有を実現しました。

Fig.1 設備設計・拠点間で横断的な 3D データ情報基盤のイメージ

熟練のコア技術を組織知化、拠点横断的な設計力底上げへ

3D正の情報基盤の整備と並行し、拠点・設計者ごとに存在していた設備設計のコアな暗黙知を背景・意図・技術根拠から紐解き、業務遂行だけでなく技術継承における活用も想定して体系化しました。また、全拠点共通の設計品質基準・図面品質基準の整備や、これらを最短で実現するための、設計プロセス・標準書・マニュアル・デザインレビューや品質チェック項目等のナレッジとして構築していきました。

たとえば、設計プロセスの整備においては、各拠点の熟練設計者の暗黙的観点を紐解き、統合・整流化することで、全拠点共通の標準検討プロセスを定義し、220項目におよぶ設計・図面品質基準を数値とロジックにより再構築しました。同様に設計ナレッジの構築においては、熟練設計者の高齢化や定年退職等による技術喪失リスクが高いコアな領域を優先し、設計要件 19件とユニット設計ノウハウ5件を皮切りに、効率・品質・持続性を向上する技術基盤を整備しています。また、上記のように形式知化したコア技術と3D設計を掛け合わせることで、これまで拠点・設計者ごとに個別手配していた購入部品の標準化と拠点をまたぐ活用や、新しい汎用標準ユニット11種の開発と適用、分担設計の推進等、従来の標準化活動を高度化する成果にもつなげています。

この結果、新規設備設計における総工数の約25%削減を実証し、熟練者による対応工数比率の50%削減に向けた具体的な解決策を見出しました。また、設計だけでなく組み立て工程までを含む手戻りの削減や課題解決のフロントローディングなどにより、マブチグループの組織的な設計体制を通じた開発の高効率化を実現しています。(業務効率化の推進、プロセス、技術継承および分担による設計者の現地化・若返りなどの対策を組み合わせることで、設計リソースを据え置いたままで生産性の向上を実現)

設備設計キャパシティ1.7倍のポテンシャルへ目途、顧客のグローバル展開を強力に支援

本活動の結果、設備設計リソースのモニタリング管理も実現し、拠点横断的な設計負荷状況の可視化に基づき、最適なリソース配置や負荷分散を計画的に実施できるようになりました。これらを含めた総合的な変革効果として、設備設計キャパシティ約1.2倍を実証(リソース据え置き)、ポテンシャルとして設備設計キャパシティ1.7倍までの実現可能性を見出し、グローバル生産・安定供給体制のさらなる強化に寄与しています。

本成果を受け同社では、構築した仕組みの持続的な進化に加えて、効率化により創出したリソースを、先進技術の開発・継承、人財育成、量産ライン立ち上げリードタイムの短縮等、さらなる顧客価値の向上に向けた「次世代ものづくり革新」を積極的に推進しています。

Fig.5 顧客満足度向上へ向けた飽くなき挑戦を推進する業務変革 (工数・体制イメージ)

生産技術部門
部⾧
小林 裕之 様

「事業拡大に伴い生産設備の重要度が増す中、さらなる成⾧への抜本的な変革が必要なタイミングでした。課題の本質は、設備設計業務そのものが属拠点化・属人化していたということ。そのため、本社主導の変革では、課題に対処し新しく構築する仕組みの良さをいかに現場設計者に実感してもらうか、納得感を重要視して推進してきました。各拠点の設計者は課題を一番肌で感じています。それを大切に、徹底した現状分析から真因を追及、数字で裏付けをとり、目指す姿や変革の必要性の認識を合わせ、対策につなげる。そして、施策は丁寧に実証し、『設計を行いやすくなった』という実感を醸成・伝播していくことを実践しながら、成果を実現してきました。今後も設備に対しての要望は高度化の一途であり、業務変革は続いていきます。生産ライン立ち上げのリードタイム短縮など、設備を含む生産工程全体を高度化していく必要がある中で、常に『設備はどうあるべきか?』という視点で目指す設計を追求し、新たなチャレンジを続けていきます」

生産技術部門
マネジャー
北本 拓也 様

「事業拡大に伴い設備設計拠点を拡充する中、本社がマブチグループの設備設計業務をこれまで以上にしっかりと統括する必要性を強く感じるようになりました。従来の、各拠点の個別最適路線を全体最適へと転換するのは容易ではありません。矢面に立つ決意のもと、変革の流れを創ることに一番苦労しました。各現場には課題意識があるため、根気強く説明すれば変革の必要性は共有できます。しかし、本社が方針を示すだけで、後は現場に任せるという姿勢では、現場の反発は必至です。自分の言葉で説明し、苦労する部分は本社側が実施して課題には迅速に対処しながら 現場と一体となって推進してきました。マブチグループ全体での設計手法構築にあたっては、現地のやり方を否定するのではなく、基盤となる考え方やデータを体系化・共通化することで共に業務のレベルを底上げしてきました。変革活動は今後のあるべき技術や標準などを扱うフェーズに入っています。構築してきた内容をベースにノウハウ自体を刷新・拡充することで、『次世代ものづくり革新』をさらに加速していきます」

※所属部署・役職は本活動推進時のものです

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