3Dプリント最終製品製作
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BNR32用デフロスターグリルに
SOLIZEの3Dプリント最終製品製作を採用
自動車OEM
日産自動車株式会社
日産スカイラインGT-R (R32)
SOLIZEは、2021年に日産自動車株式会社が取り組む「NISMOヘリテージ」において、3Dプリンティングによる補修部品の設計と製造を初めて実現しました。今回、「NISMOヘリテージパーツ」第2弾として、ダッシュボードに設置するデフロスターグリルの復刻再生産をSOLIZEの3Dプリント最終製品製作で行いました。
目次
NISMOヘリテージについて
「NISMOヘリテージ」は、日産自動車、日産モータースポーツ&カスタマイズとサプライヤーとが共同で製造廃止となった純正補修部品の復刻生産を検討し、お客さまが日産のパフォーマンスカーを少しでも長く乗り続けられるようサポートする活動です。
1989年にR32型が発売されてから30年以上経った今なお、多くの方を魅了してやまない第二世代のスカイラインGT-R。「末永く乗り続けたい」「楽しみ続けたい」「親子2代で乗り継ぎたい」というお客さまの想いをサポートしたいと、製造廃止となっていた純正補修部品を再供給すべく復刻生産の取り組みをしています。
デフロスターグリルについて
デフロスターグリルは、ダッシュボードでもフロントガラスに最も近い位置に設置されており、直射日光などの熱や紫外線の影響を受けやすく、経年劣化による変形や硬化などの損傷が起こりやすい部品です。特にインパネを外す際に破損してしまうケースが多く、補修部品の製造はすでに廃止されているため、パーツが入手できず困っているお客さまが多くいました。
そこで「NISMOヘリテージ」の復刻候補部品の一つとして、このデフロスターグリルを検討しました。30年以上前に生産されたパーツなので当時の金型は残っておらず、新たに金型を起こすとなると莫大なコストと維持費がかかるため、到底お客さまに提供できる価格にはなりませんでした。一度は断念しましたが、2021年に行った3Dプリント製ハーネス用プロテクターの実績をもとに、3Dプリンターを活用した復刻のチャレンジが始まりました。
2021年に生産を開始した3Dプリント製ハーネス用プロテクターの成果
R32型スカイラインGT-Rのハーネス用プロテクター(樹脂部分)
2021年に生産を開始したハーネス用プロテクターは、「NISMOヘリテージパーツ」として初めて3Dプリント製品が採用された部品です。
HP Jet Fusionの高い生産性や高い柔軟性を持つ材料の特性を最大限に活かし、低コストで軽量かつ機械的特性の高いハーネス用プロテクターを生産しました。
デフロスターグリルに3Dプリンターを適用するポイント
R32型スカイラインGT-Rに取り付けられたデフロスターグリル
ハーネス用プロテクターの実績をもとに、HP Jet Fusionの活用を検討しましたが、デフロスターグリルはハーネス用プロテクターよりも要件が厳しい部品でした。特に満たさなければならない要件が以下の3点でした。
要件1.高い熱負荷要件を満たすこと
先述したようにデフロスターグリルは、ダッシュボードでもフロントガラスに最も近い位置に設置されており、直射日光の熱や紫外線の影響を受けやすく、真夏になるとダッシュボードは約80度にもなります。そのような環境下でも耐えうる材料の、HP Jet FusionのPA12を選定しました。PA12は、自動車内装部品への適用実績が豊富かつコスト優位性の高い材料です。自動車内装部品で最も過酷な耐熱・耐候特性が必要なデフロスターグリルでしたが、日産自動車の要件を満たすことができました。
要件2.高い外観品質を保有していること
デフロスターグリルは自動車の内装部品のため、日産自動車のGT-Rの品格に合った外観品質を満たす必要がありました。そこで日産自動車が提示したスペックをもとに、SOLIZEと塗料メーカーがナイロン材料に適した塗料を共同開発し、製品に採用されました。これにより耐候性を高め、コストアップ要因となる追加の後処理なしに高級感のあるマットな黒色のパーツに仕上げ、相手部品との外観を損なうことを回避しました。
要件3.個体差のあるダッシュボードにも組み付けられ、商品としてお客さまにお届けできる価格を実現すること
製造から30年以上が経過しているため、当時の2Dデータさえ存在していません。そのため、現物から3Dデータを起こすリバースエンジニアリングを行いました。その際、取り付けるダッシュボードが変形していることが多く、その形状もさまざまなため、ダッシュボードの個体差に関わらず組み付けられる仕様にする必要がありました。
オリジナルの形状に近い設計をしつつ、相手部品への追従性を高めた設計にするために、日産自動車とSOLIZEのほか、NISMO大森ファクトリーのメカニックも交え、何度も検討・修正を繰り返しました。分割する位置や締結する部分の構造最適化を行い、もともと2分割だった部品を3分割に変更することで、相手部品との追従性が向上しました。また、3分割にしたことで一度に造形できるパーツ数が増え、造形レイアウトを最適化したことで品質が安定し、当初のコストに対して約1/5までコストを削減することができ、商品としてお客さまにお届けできる価格が実現しました。
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R32型スカイラインGT-Rに取り付けられたデフロスターグリル
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変更前
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変更後
3Dプリント製デフロスターグリルで得られた成果
- PA12の採用により、自動車内装部品で最も過酷な耐熱・耐候特性を満たすことができた
- ナイロン材料に適した塗料の開発により、高級感のあるマットな黒色を実現し、耐候性も高まった
- 2分割式から3分割式への分割位置最適化と分割部構造最適化により、相手部品への追従性が向上した
- 分割数の変更により3Dプリンターでの生産効率が高まり、約1/5のコスト削減を実現した
Interview
今回の取り組みはいかがでしたか。
図面や型がない古い部品なので、リバース(現物から設計図や3Dデータを起こすこと)をするところが大変でした。また、単にリバースをするだけではなく、工夫しなければいけない点が多くありました。たとえば、ダッシュボードにはめ込むための相手部品である金属の装着クリップとの組み付けです。すでに製造廃止のクリップも多く、クリップ形状を3Dデータに反映して、本体とクリップを一体造形できる形状に変更しました。現在、新車で使われているクリップを使用する部分に関しては、そのクリップに合わせてデフロスターグリル側の形状を変更しました。
最終的には組み付けもうまくいき、分割の締結部分の見栄えや、走行の際の音などに大きな影響はありませんでした。外観は、特別な磨きなどは入れず造形したままの素地に塗装することで、車体に馴染む自然なシボ感に仕上がりました。
設計変更と試作、そして実車取り付けチェックを繰り返し行いました。3Dプリンターは実物を作って評価し、細かい修正が柔軟にできる点がメリットだと実感しています。
日産自動車株式会社
グローバルアフターセールス
コンバージョン&アクセサリー/
サービスエンジニアリング事業本部
グローバルサービスエンジニアリング部
アシスタントマネージャー
新道 薫 様日産自動車株式会社
グローバルアフターセールス
コンバージョン&アクセサリー/
サービスエンジニアリング事業本部
グローバルサービスエンジニアリング部
小倉 勇己 様
SOLIZEの対応はいかがでしたか。
まず、材料選定からSOLIZEさんに入っていただき、情報交換や評価の末、最終的に規格に合った材料を選ぶことができました。
また、もともと射出成形で作っていた大きな部品なので、3Dプリンターでただ作るだけではコストが見合わず、分割する必要がありました。単純に2分割から3分割にするだけではなく、SOLIZEさんに一度で造形できるパーツ数を増やし、かつ品質も安定する造形レイアウトの最適化を検討いただいたことで、品質を担保しつつコストを削減できました。
形状変更の際にはこちらの意図をお伝えすると、それに対して3Dプリンターでの実績と知見があるSOLIZEさんだからこそのさまざまなご提案をいただけました。
日産自動車株式会社 総合研究所
先端材料・プロセス研究所兼企画・
先行技術開発本部
材料技術部材料技術企画グループ
主任研究員
吉田 晃 様日産自動車株式会社 総合研究所
実験試作部 試作技術科
リーダー
三浦 善道 様
今後の取り組みについて教えてください。
日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社 ニスモ事業所
モータースポーツ・マーケティング&セールス部
ファクトリー・レストアグループ
横田 匡亮 様
「NISMOヘリテージ」の取り組みは、現場とのすり合わせが重要です。今後も日産モータースポーツ&カスタマイズの知見や情報と、日産自動車の開発とのコンビネーションを強みに、製品化に向けてほかのパーツでの3Dプリンターの活用を推進していきます。コストや品質保証の点でハードルは高いのですが、3Dプリンターの魅力を最大限に活かして、新車への適用も検討していきたいと考えています。
※所属部署・役職は本活動推進時のものです
3Dプリント最終製品製作に関するお問い合わせ
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