3Dソリューション
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設計現場に伴走した標準化×CADテンプレート構築支援により
作画工数削減および品質不具合ゼロを実現
自動車OEM
ダイハツ工業株式会社
「良品廉価」なクルマづくりのため、設計標準化活動を推進
ダイハツ工業株式会社は「お客様に寄り添い、暮らしを豊かにする」というビジョンのもと、軽自動車や小型車を中心に、1mm、1g、1円、1秒にこだわり、良品廉価なクルマづくりを進めています。2006年以降、16年連続(2023年3月末時点)で軽自動車の新車販売のシェアNo.1を獲得しているスモールカーのリーディングカンパニーです。軽トップブランドとして培った技術やノウハウをコンパクトカー領域にも拡大し、「トール/トヨタ ルーミー※1/スバル ジャスティ※1」「ロッキー/トヨタ ライズ※1/スバル レックス※1」など、市場から支持されるクルマを次々と送り出しています。
一方、開発現場は、市場ニーズの高度化・多様化への対応が相まって、工数削減のため設計標準化による効率化が急務となっていました。
そのような中、外装設計グループ※2内で業務に関わるSOLIZEの3D CAD設計エンジニアが、設計標準化を推進、遵守するための施策としてCADテンプレート構築を提案し、本活動が始まりました。
「外装部品設計は特に毎年膨大な数の部品開発をしているため、ルール化されていない状態での図面DRは検図する側に莫大なチェック工数が発生していました。すべてのデータをマンパワーでチェックする限界を感じ始め、標準テンプレートの確立が急務であると認識しました」
車両開発部 内外装設計室
室長 竹内 晴彦 様
「この活動のリーダーに任命された時、熟練設計者が持っている経験値と知識(暗黙知)を設計標準断面やテンプレートに入れることが使命でした。当時、現場ではリードタイム短縮が求められていましたが、意匠変更への追従にうまく対応できず作画工数の抑制が課題でした。現場にテンプレートはありましたが、自分たちが制作したものではなかったため使うことはありませんでした。そのため、標準テンプレートの実務化に対する不安がありました」
車両開発部 内外装設計室 機能主査グループ
外装機能主査 鶴田 学 様
テンプレートの有効性を実証、室全体を巻き込む流れをつくる
はじめに、「設計変更の最大の要因」「部品の部位に限定した際、繰り返し作画を要する形状」「意匠変更の際、都度作画を要する形状」の観点で、外装設計領域の爪形状を対象に、設計の標準化およびCADテンプレートの構築に着手しました。設計変更の最大の要因を対象とすることで大きな工数削減効果が得られるとともに、テンプレートにより作画を自動化・一定化することでヒューマンエラーがなくなり、チェック担当者の工数を削減できます。設計品質の向上はもちろん、最終的に設計変更をなくすことで無駄な工数と金型修正費用を発生させないことを目指し、実証検証を進めました。
爪形状の標準化では、各部の高さ・幅・角度などの形状的な寸法、隙や掛かり代などの機能的な寸法を定義します。それをCADの履歴として構築することで、誰が検討・作画をしても一定の設計結果となるCADテンプレートを構築します。また設計標準のみならず、 設計者がCADを用いて形状を作成するうえで考慮している、レイアウト検討や要件チェック工程の要件をヒアリングし、固定・選択・変更の判断をロジック化してCADテンプレートに実装しました。その結果、従来設計者が50時間を要していた作業を、8時間に短縮しました。また、直近の開発車種にCADテンプレートを適用することで、3D設計工数84%削減と品質不具合ゼロを実現しました。
CADテンプレートの効果への理解が得られたことで、CADテンプレートによって業務効率化をしたいという開発現場のニーズが高まりました。最初の適用車種にて13件の設計標準をもとに、20種類のCADテンプレートを構築することから開始した本活動は、内張り設計グループ※3とインパネ設計グループ※4へと広がり、主要な車種への適用をはじめ、内外装設計室全体の活動として多種多様な車種に展開しています。
「まずは外装でテンプレートが有効活用できることを証明できたため、同様に意匠部品開発をしていることで意匠置換にあわせて複数回の作画が発生している内張りやインパネにも適用していきました」(竹内様)
「設計だけでなく、後工程の生産技術や工場にも恩恵がもたらされました。これまで開発車種ごとに爪の形状はばらばらでしたが、標準化とテンプレートにより形状が統一されたことで、内外装設計部品の品質評価や管理が楽になったと喜ばれ、とてもよい活動だと言ってもらえました」(鶴田様)
徹底的に現場に寄り添い、時には立ち止まりながらも、標準化活動を前へ
設計品質向上および設計リードタイム短縮を加速させるためには、設計標準の充実が不可欠です。SOLIZEは次期車種開発に向け、一気にCADテンプレートの適用部位を拡大しました。
従来のCADテンプレート開発は、設計標準を順序通りに理解し、要件を定義、仕様書作成後に着手するウォーターフォール型の開発ステップとなっていました。リソースがひっ迫した開発現場では標準化活動が滞留することが多く、CADテンプレートの開発も停滞しがちです。それに対してSOLIZEは、設計標準が素案の段階からCADテンプレート開発に着手します。開発現場での豊富な設計経験を背景に、ヒアリングと並行して仕様を固めていくことが可能です。完成したCADテンプレートの仕様はそのまま設計標準として使用でき、無駄なく、アジャイルに設計標準・CADテンプレートの充実を図りました。
SOLIZEは単なるテンプレートの構築にとどまらず、より深く設計現場に入り込みます。同社の設計者がテンプレートを使用した際に不具合や要望が発生すると、現場で即座に対応し、設計業務を支援します。またテンプレート構築者自身、製品設計の経験があるため、同社の設計者の意図や思いを理解し、テンプレートに反映することができます。現場に寄り添い、設計者と密にコミュニケーションを取りながらテンプレート構築を進めることで、設計者が本当に使える、使いものになるテンプレートを構築しています。
しかし、すべてが順風満帆に進んだたわけではありません。順調にテンプレートの適用範囲を拡大していた折、テンプレートを活用した部位で重大な不具合が発生するかもしれないという懸念が持ち上がりました。この時、テンプレートの何が悪いのかがすぐには明らかにならず、不具合の懸念があるテンプレートのみならずすべてのテンプレートの運用を停止する事態になりました。
従来、テンプレートや効率化ツールに不具合が発生し、それが設計変更につながる場合には、現場からの信用が失われて使われなくなるため、なかなかテンプレートや効率化ツールは定着しませんでした。品質不具合を発生させないために、また本活動の歩みを止めないために、不具合が懸念される発生原因を特定し、改善することが急務でした。
効率化ツールに不具合が発生するとその解決は効率化担当者任せとなることが多く、設計的な不具合であれば、効率化担当は設計者からの改善策を待ってしまいがちです。しかし本件では、SOLIZEのみでテンプレートの改善に取り組むのではなく、現場の設計者にも協力を仰ぎ、共に原因を追究しました。そして不具合が懸念される発生原因が、議論し尽くされていなかった標準寸法(形状を成立させるための固定寸法)にあることを突き止めました。
懸念されたテンプレートは改善し使えるようになったものの、ほかのすべてのテンプレートにも問題がないことを証明しなければなりません。SOLIZEは一つひとつの寸法を設計者と共に徹底的に見直し、テンプレートの改善を行いました。現場から十分な理解が得られたことで、テンプレートは再び設計者に活用されるようになりました。現場に寄り添い、伴走することで、標準化・テンプレート化活動は現在も着実に歩みを進めています。
「テンプレートを活きたツールにするため、テンプレート開発をするキーマンが現場設計に寄り添い、各設計がどのようなプロセスで各断面を決定しているかを理解しました。その上で必ず守るべきハードポイントは固定寸法とし、設計者が選択して決定できる選択寸法も兼ね備えた、設計が求める真のテンプレートを具現化していただけました」(竹内様)
ダイハツ工業の内外装設計の進化を支える、現場に根付く活きたテンプレート
新機種の開発では、設計標準に該当しない新しい形状の設計にトライする場面が少なからず存在します。その設計内容を設計標準・テンプレートに反映し、最新化することが重要です。対応がおろそかになると、設計標準・テンプレートは陳腐化して使われなくなってしまいます。SOLIZEは設計者の声を現場で直に聞き、標準改訂・テンプレート改修の対応をしながら、同社の設計者自身がテンプレートの保守、維持を続けられるよう業務プロセスの整備を進めました。
設計標準を遵守するということは、すなわちCADテンプレートを必ず使用するということと同義となります。そこでSOLIZEは、CADテンプレートの使用可否を設計者の判断に委ねることなく、CADテンプレートが必ず適用される仕組みづくりに取り組みました。着目したのは設計チェックリストの活用です。設計プロセスにおいてゲートとなる設計チェックリストの項目にCADテンプレートの使用を義務付けることで、必ず設計標準を遵守する仕組みを実現しました。例外的にCADテンプレートを使用しない場合は理由を記載させることで、設計標準およびCADテンプレート改訂の促進にもつながります。既存のプロセスと帳票を最大限活用することにより、無理なく、迅速かつ効率的に、仕組みづくりを推進しました。
無駄の要因を突き止めることから始まった本活動は、パイロットスタディでの成功を経て、加速・拡大を続けてきました。設計不具合が発生した際には、CADテンプレートの使用を全面的に中断し、新しい取り組みにつきものの産みの苦しみを味わうこととなりました。それでも諦めることなく、設計標準を徹底的に見直し、地道にテンプレート改修を行い、本活動は前進し続けています。現場に根付く活きたテンプレートを作り続けてきたことで、現在は設計標準・CADテンプレート化を日常的に推進する文化が醸成されています。
SOLIZEは引き続き、同社の1mm、1g、1円、1秒にこだわる、お客さまの生活に寄り添ったクルマづくりをボトムアップで支えてまいります。
「テンプレートの初期着手段階からSOLIZE様キーマンと共に試行錯誤し、作り上げてきた思い入れが大変強いテンプレート業務です。SOLIZE様の現場を理解してその中で改善するものを提案していただける社風があったからこそ、本当に活きたテンプレートを構築でき、継続更新しながら運営できていると実感しています。ありがとうございました」
「設計者に寄り添った開発をしていただけたからこそ『実務で使えるツール開発』ができたと実感しています。外装メンバー内であるべき姿を議論した上でSOLIZE様と毎週議論を交わし、設計意図が織り込めるように試行しました。頭出しプロジェクトでは意匠追従性や形状不具合などの検出を共に行いながら構築を進めました。その後、各プロジェクトに展開し実績を積み上げることで『品質の安定、技術ノウハウの棚入れ、作画工数の短縮』を実現できています。 携わっていただいた方々にこの場をお借りして感謝申し上げます」
「私はこの活動の途中から参画することになったのですが、テンプレートというと単なる便利グッズ、作業時間効率化ととらえていましたが、SOLIZE様のアプローチはまったく違いました。それは顧客の方針に沿って実現させるための開発ということです。つまり、単なる作業効率化だけでなく、設計者の技術力アップ、さらには組織力改善への仕組みづくりの範囲まで貢献いただき、SOLIZEの皆様には大変感謝しています、本当にありがとうございました。ぜひ今後とも技術力向上にむけてご協力いただければ幸いです」
「各テンプレートを新規作成および改訂する際に、標準値/形状をテンプレート担当の設計者とSOLIZE様が一緒になって進めていただいたため、現場の声が入ったテンプレートを作成できたと感じています。また、そのような活動を通じて設計者自信に『標準値、標準形状』を意識付けでき、設計者個人のレベルアップにもなりSOLIZE様には感謝しています」
- ※1:ダイハツが供給するOEM車。
- ※2:バンパー、グリル、フードガーニッシュ類などの外装部品の設計。
- ※3:ドアトリム、デッキサイドトリム、バックドアトリム、ピラー、ヘッドライニング類などの内装部品の設計。
- ※4:インパネ、グローブボックス、センターコンソール、PPメンバー類などのインパネ部品の設計。
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