COLUMN技術コラム
[No.56] SOLIZEの自動運転シミュレーション技術
2021.08.03
SOLIZEテクノロジーラボ
ますます複雑化する自動車の制御開発において高いレベルのサービスを提供し続けるには、クルマの「走る・曲がる・止まる」に関わるメカニズムやそれらを司る制御システムへの深い見識とモデリング技術が求められます。これら技術を一つのシミュレーションモデルでわかりやすく見える形にするとともに、ビークルダイナミクスや電動パワートレイン分野のエンジニアリングサービスを提供するSOLIZEの技術を紹介します。
1.自動運転シミュレーションへ拡大・発展
自動運転の本質は突き詰めると、①外界状況を正確に認識する、②認識した状況に基づき自車の目標経路と車速を決定する、③目標経路・目標車速を忠実に実現する、の3つです。このうち②や③は、SOLIZEの持つビークルダイナミクスや電動パワートレインの技術が基盤となる領域です。SOLIZEは、これまでに培った技術を自動運転シミュレーションへと発展させます。
2.自動運転の目標経路・目標車速を決定する
日常的な場面で自動運転に求められるのは、ドライバーや乗員から「安心で滑らか・気持ち良い」と感じてもらえることです。前後左右に大きな加速度を出さず交通信号・法定速度を遵守しながらも、メリハリのあるスピードコントロールが必要です。まさしく、「熟練ドライバーがさまざまなシーンで発揮する運転技量を、クルマ自身が再現すること」が求められるのです。
一方、不意なクルマの飛び出しなど危険が迫る場面は、優先度は滑らかさではなく事故回避です。「止まるのか」「ステアリングで避けるのか」もしくは「止まりながら避けるのか」という高度な判断が求められます。飛び出すクルマとの相対距離や速度、ステアリングやブレーキの最大パワー、路面状況等に応じて経路(回避コース)と車速を注意深く決めなければなりません。
3.決定した目標経路や車速を忠実に実現する
自動運転ならば、ステアリングの制御は多くのセンサーから自車の位置や角度情報を読み取り、それらに基づいて操作量を決めると思われがちですが、実際は異なります。特に高速走行時は目標経路と実際のずれを検出して操作量を決めるFeed Back制御だけでは軌跡の修正は間に合いません。目標経路・車速と同時に操作量も決定するFeed Forward制御が必須です。ステアリング操作に対する車両ダイナミクスを正しく理解して設計すれば、目標経路との誤差数cm以内で走行することが可能となるのです。
4.自動運転をクローズドループかつリアルタイムでシミュレーション
自動運転の開発に関わる多くの方は、「自分の部品を改善すれば、車両レベルで自動運転の性能がどれくらい良くなるのか」ということを知りたがっているでしょう。それがわかればシステムや部品の目標を決められて合理的で納得性も高い技術判断が行えるからです。
シミュレータは、交通シナリオ生成・自動運転制御・車両モデルでクローズドループを構成します。さらに運転席からの視界表示と反力を含むアクセル・ステアリング・ブレーキ装置を加えることで、手動/自動運転の両方が行えるようにします。これによりさまざまなシナリオでの自動運転優位性検証や、自動→手動運転切替え(オーバーライド)の検証など、自動運転開発への幅広い活用が可能となります。
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SOLIZEは外部パートナーと連携し、自動運転シミュレーションをクローズドループかつリアルタイムで行える環境を構築します。