COLUMN技術コラム
[No.47] 3Dプリンターの特徴を活かした製品設計⑤ - 一体化による製品信頼性向上 -
2020.01.10
3Dプリント 金属造形
No.46にて一体化による形状簡略化のメリットを紹介しましたが、部品点数が減ることによる信頼性向上もメリットの一つです。信頼性工学では、部品の信頼度は「規定の時間を通して機能を果たす確率」と位置付けられており、信頼度Rは時間tの関数として以下の式で表現されます。
R(t)=e-kt (1)[1]
kは故障率を表しており、時間経過によって信頼度は減衰していくことがわかります。
時間を一定とした場合、(1)式の信頼度は定数になります。n個の部品から構成される製品、かつ、部品が一つでも故障すると製品全体の機能が失われる場合の一定時間における信頼度を考える時、個別の部品の信頼度をrとすると
R=r1r2…rn (2)
となり、それぞれの部品の信頼度が一定の場合を仮定すると、
R=rn (3)
で表すことが可能です。
(3)式をグラフ化したものがFig.1です。部品数が増すことで大きく信頼度が低下することがわかります。
No.45、No.46、今回の3回にわたり、部品を一体化することのメリットを説明してきました。こういったメリットを活用した事例に、HP社製の3Dプリンター「HP Jet Fusion 5200」で一体造形した流体管理システムが挙げられます(Fig.2)。14部品を1部品に一体化したことで組立工程や小部品の調達が不要になり、コストが約30%低減されました。また、ねじのトルク管理といったメンテナンス工程も不要になったため、製品全体の信頼性も向上しています。
このように、部品を一体化することにより、工程削減によるコスト低減、軽量化や信頼性向上による品質向上が望めます。3Dプリンターの活用を念頭に置いた製品設計を行う際には、一体化できる部品がないかを検討しながら設計してみてはいかがでしょうか。
[1] 大村 平, 改訂版 信頼性工学のはなし, 日科技連, 2011
[2] 事例提供:株式会社日本HP