COLUMN技術コラム
[No.41] 金属3Dプリンターの残留応力が品質へ及ぼす影響③ - ブリッジ形状 -
2019.09.16
3Dプリント 金属造形
No.39、No.40にて、温度変化による金属の膨張・収縮が品質にもたらす影響について紹介しました。オーバーハング形状とともに認識しておかないと予期せぬ不具合につながる形状として、ブリッジ形状が挙げられます。
Fig.1のCADデータを造形したものがFig.2です。赤線で囲った範囲に段差が生じています。この段差はブリッジの左右の足が繋がる高さで発生しています。そのタイミングでどのような現象が起こっているのかについて、以下で考察します。
単純半円形状におけるn層目の積層で左右の足が繋がる場合を考えます。Fig.3(a)はn-1層以下、Fig.3(b)はn層目、Fig.3(c)はn+1層目以降の造形品側面を示し、レーザー照射面に発生する熱応力を矢印で表します。n層目で左右の足が繋がると、収縮して互いに引っ張り合うために応力の大きさがn-1層目から大きく変化し、左右の足が内側に引っ張られて倒れます。その結果n+1層目で段差が発生します。
このような段差を抑えるための対策は、サポートを設置して変形を抑える、予熱して冷却速度を下げることで応力の変化を緩和する、変形を見越して形状にプリフォームをかける等が考えられます。また、造形時の段差は許容し、その後追加工で仕上げる、という方法を取ることも可能です。積み上げて形を作る3Dプリンターに特有の現象ではありますが、メカニズムを理解すれば対策を講じることは可能です。