COLUMN技術コラム
[No.34] パウダーベッド方式の金属3DプリンターでのDfAM - サポートが必要な理由② -
2019.07.22
3Dプリント 金属造形
No.33にて、パウダーベッド方式の金属3Dプリンターでは、角度の浅いオーバーハング形状にはサポートと呼ばれる保持形状を付与する必要があると説明しました。今回はその中でも必ず対策が必要な製品形状と、その対策を具体的にご紹介します。
Fig.1に角度別のオーバーハング形状を示します。Fig.1-(c)のように、オーバーハングがマイナスになった場合は特に注意が必要です。Fig.2に、Fig.1-(c)の造形途中の模式図を示します。n層目までは左の幹の部分のみが積層されますが、n+1層目で初めて、赤く示した領域(α)にレーザーを照射する必要が生じます。n層目までその位置には造形物がないため、斜線で示したαの下層には粉末しかなく、レーザーを照射した場合αは粉の上に乗っているだけの状態です。これではn+2層目の粉末を敷くためのリコーターの力でαが動いてしまうため、製品形状のずれ、造形停止などの不具合発生要因となります。αのように、粉末上に独立してレーザーを照射しなければならない形状のことをSOLIZEでは「島始まり」と呼んでおり、パウダーベッド方式の金属3Dプリンターでは必ず対策を打たなければならない形状と定義しています。
島始まりを回避するためには、①造形方向を変更する(Fig.3)、②製品形状を変更する(Fig.4) の2点が考えられ、この2点で回避できない場合はFig.5のようにαの下にサポートを付与して固定する必要があります。サポートが増えれば造形時間が増加し、また取り除く手間もかかりコストが増します。また、製品形状の内部にサポートが必要な場合、取り除くことができない場合があります。そのため、可能な限りサポートを使用せずに造形できる工夫(DfAM)をすることが重要です。
次回は具体的なDfAMの事例を紹介します。